製氷・スラリー設備|冷やすにはカタチが大事 

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冷却用スラリーアイスシステム

1. スラリーアイスとは

スラリーアイスとは0.1〜0.5mm程度の球状の氷が混ざった液体で、ちょうど雪が半分溶けたような状態になっています。

スラリーアイスとは

液体中に含まれる氷の割合(氷濃度という)は使用目的によって調整可能で、製造装置出口では0〜30%程度の範囲で調整でき、魚倉やタンクに貯めると最高約40%、その後氷と液を分離することで最高約80%の割合にすることができます。

表:1 氷濃度毎の状態と使用内容

スラリーアイスの原液には海水やブラインを使用し、清水では製氷できません。

表:2 製造可能なブライン濃度

スラリーアイスの温度は原液に使用される海水やブラインの凍結点より少し低い温度となります。

各ブラインの濃度と凍結点、表3:スラリーアイスと塩分濃度・温度の関係

2. スラリーアイス製造装置の概要

 スラリーアイス製造装置の概略は右図の通りです。

 スラリーアイスを製造する機器をアイスジェネレータと呼びます。海水は海水供給ポンプでアイスジェネレータに供給されます。アイスジェネレータには圧縮機、凝縮器、膨張弁を経て冷媒が供給されており、この冷媒で海水を冷却し海水中に微細な氷を発生させ、スラリーアイス出口より排出されます。

図1:スラリーアイス製造装置概略図

図1:アイスジェネレータ

 アイスジェネレータは二重管構造をしており、外管と内管の隙間に冷媒を供給し、内管を流れる海水を冷却します。内管内部にはスクレーパーが設置されており、これが回転することにより内管内面で発生した微細氷を海水中に取り込んでいます。

ジェネレーターは、長さが長くなるほど製氷能力が大きくなります。
長さは7タイプ用意されており、最も長いタイプで製氷能力が足らない場合は、台数を増やします。

ジェネレータ

3. スラリーアイスの製造方式

1)循環製氷方式

予め必要量の原水を魚倉(又はタンク)に貯めておき、原水を魚倉とスラリーアイス製造装置間で循環させながら徐々に必要氷濃度とする方式。
製造装置が小型になるケースが多いが、必要氷濃度になるまでに一定時間必要となります。
また、製造後にスラリーアイスを移送する場合には魚倉に攪拌装置が必要となります。

図6:循環方式概要

図6:循環方式概要

2)ダイレクト方式

製造装置に供給された原水を製造装置から排出された時点で必要氷濃度のスラリーアイスとする方式。 必要氷濃度のスラリーアイスを短時間(15分程度)で供給開始することができ、運用方法によっては原水魚倉(又はタンク)が不要になりますが、製造装置が循環方式より大きくなるケースが多い。但し、供給するブラインを予冷することにより、製造装置を小型化したり、供給量を増加させることも可能です。

図8:循環方式概要

図8:ダイレクト方式概要

4. 漁業分野でのスラリーアイスの活用方法

漁業分野でのスラリーアイスの活用方法

漁業分野でのスラリーアイスの活用方法

漁業分野でのスラリーアイスの活用方法

5. 漁船で使用する場合のメリット

◎氷を含む液体なので・・・
・漁獲物を入れた際の温度上昇が抑えられます。

漁船で使用する場合のメリット

◎微細な氷なので・・・
・漁獲物の表面を傷つけません。
・漁獲物を速く冷却します。
漁獲物の高品質化
◎海水から氷をつくるので・・・
・氷代が不要です。
◎冷媒の蒸発温度が高いので・・・
・従来の製氷機より消費電力が少なくなります。
◎流れる氷なので・・・
・ポンプ搬送ができ省力化が可能です。
低コスト・省力化

6. スラリーアイスでの魚介類冷却例

1)アジの冷却

 3つの保冷ボックスに、(1)海水から製造したスラリーアイス (2)砕氷と海水を混合した海水氷 (3)砕氷のみをそれぞれ十分な量入れ、そこにアジを投入し冷却時間を測定しました(図1)。
本試験においては、スラリーアイスの伝熱性の良さに液体温度の差が加わり、中心温度が2℃になる時間は、スラリーアイスが22分、海水氷が36分、砕氷のみが46分となり、スラリーアイスの冷却速度は海水氷の1.6倍、砕氷の2倍の速さとなりました。

図1:アジの冷却曲線

2)ブリの冷却

 3つの保冷ボックスに、(1)塩分調整した海水に砕氷を混合した海水氷(塩分2.7%) (2)海水から製造したスラリーアイス(塩分3.7%) (3)塩分調整した海水から製造したスラリーアイス(塩分2.0%) をそれぞれ十分な量入れ、そこにブリを投入し冷却時間を測定しました(図2)。
 本試験においては、魚体中心温度5℃までの冷却時間を比較すると海水スラリーアイスと海水氷がほぼ同じ、塩分調整スラリーアイスは海水氷の約1.5倍の時間がかかるという結果になり、また、冷却後のブリの外観は、海水スラリーアイスは色がさめており悪かったが、塩分調整スラリーアイスは海水氷より鮮やかで美しい仕上がりとなっていました。また、保冷24時間後の眼球の白濁も海水スラリーアイス及び海水氷では重度の白濁が発生していましたが、塩分調整スラリーアイスでは殆ど白濁が発生していませんでした。

図2:ブリの冷却曲線

3)カツオの冷却

 3漁船の魚艙に、(1)塩分濃度調整をした冷海水 (2)塩分濃度調整をしたスラリーアイス を入れ、そこに漁獲されたカツオを投入し冷却時間を測定しました(図3)。
 本試験においては、魚体中心温度5℃までの冷却速度を比較すると、スラリーアイスは冷海水の約2倍の速さとなり、魚体の状態は、心配された氷によるスレは認められなかったが、急冷後はカツオを冷やしすぎた場合にみられる魚体が黒っぽくなる状態でした。しかし、その後魚艙内の換水を通常の冷海水でおこなった後は通常のものと同じ状態となりました。

図2:カツオの冷却曲線

4)イワシの冷却

 定置網で漁獲されたイワシを使用し、スラリーアイスの塩分濃度と液温の条件を替えて眼球の白濁状態について試験をおこないました。
 本試験においては、眼球の白濁は海水の塩分濃度以下であれば発生しないが、液の温度が-1℃以下になると塩分濃度にかかわらず白濁が発生するという結果になりました。しかし、白濁が発生した後にスラリーアイスから取出し氷蔵をおこなうと白濁は無くなりました。

 以上の結果から、魚の凍結する温度は一般に-1.5℃程度であるが、眼球は-1℃程度で凍結するようで、スラリーアイスで冷却した場合の眼球の白濁は、眼球のみが凍結したためと推測されます。したがって、魚体急冷終了後スラリーアイスから取り出し、通常の保冷をおこなうと白濁が無くなり透明な状態に戻るのではなかと予測されます。

5)ホタルイカの冷却

 ホタルイカでおこなった試験においては、急冷終了後0℃以下の温度で保存すると体色が透明から白くなり商品価値がなくなるという結果が得られました。塩分濃度は1%よりも薄くなるとやはり体色が白くなりました。

6)イカナゴの冷却

 本試験では、イカナゴもホタルイカ同様、急冷終了後0℃以下の温度で保存すると体色が白くなるが、塩分濃度はそれほど薄くしなくても外観上の品質低下は発生しない傾向が認められました。

7)キンメダイの冷却

 キンメダイを塩分濃度を調整したスラリーアイスに漬けて2時間冷却をおこいました。本試験においては、どの塩分濃度でも体色の悪化は認められ無かったが、眼球の白濁はやはり-1℃以下になると若干認められました。キンメダイの場合、眼球が特に大きいためか、−2℃以下のスラリーアイスに漬けたものは眼球内に凍結によるひび割れ状の損傷が発生し、この損傷は冷却後の保蔵温度を上げても解消しませんでした。



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